クラドニ図の作りかた
ここで作ったクラドニ図用の作り方を残しておく。
Googleで「クラドニ図 スピーカ」で検索するとちゃんとした市販品から、自作している物まで色々と出てくる。市販品になると3-4万円/個くらいの物があった。さすがにちょっとお高いので、サクッと簡単に出来る方法は調べたりした。中でも一番簡単に出来るのはこれだと思う。
適当なプラケースとかの上に粒子(砂・塩・砂糖)を撒いて、声を出すだけ。これだけで紋様が浮かび上がる。
ちなみに、600年前の教会の壁からも同じような図が出てきている 600-Year-Old Music Found Encoded in Chapel Walls 。この時代はまだ共振によって不思議な紋様が出てくるとは分かっていないと思うけど、経験的に賛美歌や教会から奏でられる音色から出てくる紋様を記録していたというのも想像に難くない。
また最近でもクラドニ図を使った研究も結構あったりで、自分的に面白いと思ったのがnatureからのこちら Controlling the motion of multiple objects on a Chladni plate 。といった感じでクラドニ図を使った物は古くから現在まで沢山ある。
以下では、自分の作った方法を載せておく。
■ 完成形
鉄板については四角形・円形どちらでも大丈夫。好きな形を選べばよい。自分は直径180mmの円形、180x180mm 正方形・0.5mmの鉄板を利用している。
■ 部材
・10cm フルレンジスピーカ x 1
・3Dモデル : ここからダウンロード base.stl, top.stl, cone.stl の3種類
・八幡長ネジ 150mm M5 x 4
・M5 80mm なべ小ネジ x 1
・M5 ナット・ワッシャ x 24
・エーモン平型端子スピーカー用 S・Mセット x 1
・鉄板(中心にM5用の穴) x 1
・白砂(ダイソーとかに売っている)
■ 作り方
まずは3Dプリンタでbase.stl、top.stl、cone.stl を出力する。3Dモデルをダウンロードして展開すると、それぞれ…
base.stl : 土台(下の円形のもの)
top.stl : 支持(上の円形のもの)
cone.stl : スピーカと鉄板の支持
という役割がある。シンプルな形状でFusion360でサクッと作っている。スピーカのサイズに合わせてSTLを修正して使ってもOKっすね。
次にスピーカを加工する。スピーカのセンターキャップ部分を残してカッターでコーンを切り取る。やってみれば分かるけど、結構綺麗にコーンは除去できる。
そしてセンターキャップに出力した3Dモデル cone.stl を”M5 80mm なべ小ネジ”を通してから接着剤で完全に固定する。
あとはとても簡単。base.stl で出力した土台に”八幡長ネジ 150mm M5″を通して支持( top.stl )にM5ナット&ワッシャーで固定してガワが完成する。
最後に支柱付きのスピーカーをさっき通した”八幡長ネジ 150mm M5″にM5ナット・ワッシャーで固定すれば完成になる。
スピーカーには”エーモン平型端子スピーカー用”のS/M端子をカシメて接合して完成になる。端子を音源につなげるとボイスコイルが動いて音として支軸を通して伝わっていくという流れになる。
鉄板をセンターキャップからの支柱につなげて、砂を落として音出しすると図が出てくる。
ここで、鉄板が水平にならないと、砂が一方向に落ちていってしまう。対策として、スピーカ部は”八幡長ネジ 150mm M5″x4本で支えているから、水平になるようにネジを調整すればわりと簡単に水平を取れるようになっている。なので、設置したところが水平でなくても、ある程度の誤差は吸収できるような構造にしている。
■ 鉄板
自分は鉄板を使ったけど、スピーカ部が出来れば鉄板以外の物でも接合できる。なぜ鉄板を使ったか?というと、出来るだけ音の振動を伝えやすい素材を使った方が良いだろう(参考)ということからだった。
一応、色々な厚さ・サイズ・素材で切り出してテストを行って、180x180mmが扱いやすいということに落ち着いた。鉄板は簡易な入手性も考えて、東急ハンズで0.5mm鉄板を入手・カットして使っている。
■ スピーカー
スピーカーは全てハードオフ・ヤフオクで入手したジャンク・スピーカを利用している。スピーカ1個で新品 2000円〜くらいするスペックの物が欲しかったのもあるけど、量を揃えるとなるとコストに直結する。10個作ろうとすると予備も合わせて2〜3万円はかかってしまう。
そこで、動作未確認のジャンク・スピーカをゲットして利用することにした。
価格帯は1円〜500円程度(もちろんスピーカなので2台で)。コンポと一緒に付いてくるスピーカがほとんどで、本体のアンプが壊れてスピーカだけ出ているケースが多かった。だから何気にスピーカ自体はそのまま使える。24本ほどジャンク・スピーカを入手したけど、鳴らないものは一つもなかった。
スピーカ本体からバラすのは再利用として環境に優しい。ただ、エンクロージャー(木材)が大量に積まれていくことになった。
スピーカ自体は何を使っても良いけど、コーンに電極が接合されている物は避けることにした。コーンが付いていると音が凄く鳴るので、クラドニ図をだけを出す場合にはマッチしない。そこでコーンを切り取るわけだけど、そのときコーンに電極が付いているとボイスコイルまで電極を辿ることなる。とても切れやすい銅線をうまく引き剥がすのは(何個かスピーカを犠牲にしてやってみたものの)うまく出来なかった。そこでコーンに電極がないスピーカのみを使うことにした。というのもあって、大量の不採用スピーカも出てくることになった。
■その他
出来た物をそのままPCとかのジャックからの出力を使ってもパワーが足りなくて図が出てこないはず。そこでパワーアンプの出番になる。
ここではRPi4x16台を使った電波送受信からダウンコンバートして、アンプ経由で図を出している。ここで使っているアンプはこちら。価格もお手頃で出力もあって良い感じ。
これだけの量を電波側の周波数を変えながらテストしていくとなると1-2時間はかかってしまう。鉄板の気温変化による伸縮が効いて、環境変化に合わせて再調整を行うのが、台数も多くて大変な作業の一つにもなった。
最後に…
予備部材も使って全部で12個作ってタワーみたいに並べてみた。
12件の返信
[…] ちなみに、このクラドニ図形は家庭でも簡単にできるという。ポリバケツの上にラップを貼って、「アー」と叫ぶ。それだけでも、運がいいと図が出ることもある。この装置に関して、新里さんが作り方をブログで公開している(クラドニ図の作りかた|SIPROP量子化計画)。 […]
初めてブログを拝見させて頂きました。
グラドニ図形にとても興味があり自分でもやってみたかったのですが、装置がなかなか一般販売されておらず諦めていたところ、こちらの記事に出会えました。
画像にもPCが見えているのですが、音の入力元はPCから好きなので音源が流せるようになっているのでしょうか?
お手隙の際にお返事頂けましたら幸いです。
普通のPC(Windows/Mac…etc)から出力する場合、ここで作ったスピーカにそのまま流しても音の出力が弱くて図形として出てくるか微妙なので、パワーアンプを使って出力させています。
ここでは、これと同じようなパワーアンプを使っています => https://www.amazon.co.jp/dp/B07D4HSXCG/
例えば、”PC(好きな音源) => PCの出力ジャック => パワーアンプ => クラドニ図(スピーカ) ” といった構成ですね。
興味深い記事ありがとうございます。以前からクラドニ図に興味があったので大変助かります。
自分でもパーツを集めて作成中なのですが、10cmスピーカーのセンターキャップが、3Dデータのパーツにハマるものが中々見つかりません。この場合、3Dデータをセンターキャップに合わせて、変更するしかないでしょうか?
ご返信いただけましたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
そうですね…キャップに合わせる部分がポイントにはなるので、キャップ部分をスピーカーのコーンのサイズに合わせた修正モデルを適当に作ってあげるのが良いと思います。
とても興味深い記事ありがとうございます。
自分でもパーツを集め現在製作中なのですが、質問があります。
「スピーカーセンターキャップに出力した3Dモデル cone.stl を”M5 80mm なべ小ネジ”を通してから接着剤で完全に固定する。」とのことですが、センターキャップに対し3Dモデルが小さく、ハマらずに困っております。
こちらは本来であればスッポリとハマるものでなければならないのでしょうか?
ご返信いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
すっぽり入る方が”力(振動)”を伝える意味でも良いとは思います。
ただ、綺麗に入らない場合は致し方ないかなと。
3Dモデルを少し修正&プリントを試行してジャストサイズになるようにするのは、わりと時間も確かにかかるといえばそうなので。
とても興味深い記事ありがとうございます。
自分でもパーツを集め現在製作中なのですが、質問があります。
「スピーカーセンターキャップに出力した3Dモデル cone.stl を”M5 80mm なべ小ネジ”を通してから接着剤で完全に固定する。」とのことですが、こちら接着剤はどのようなものを使われておりますでしょうか?
なるべく振動を吸収しない接着剤のほうが良いのかと思うのですが、
アロンアルファのような瞬間接着剤でも大丈夫でしょうか。
また、接着面は3dプリントしたcone.stlの外周、淵部分の底面のみという理解でよろしいでしょうか。
ご返信いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
思いっきりアロンアルファを使っています。
接着面はその通りです、外周の淵部分の底面ですね。
最初に作ったとき、見事にミスったのですが、小ねじを通す前に接着してしまって(振動を鉄板に伝えるための小ねじですね)、はがし液でコーン部分を取ったりしてました。
接着さえできてしまえば、あとは音を流し込むだけですね。
2台作ると、別々の音を流したり共振させて遊べたりもできると思います。
早速ご返信ありがとうございます!
最初SUの接着剤を使ってしまい粘ついたのと接着性が弱かったので、確認でした。
そして瞬着で先ほど無事接着しましたが、傾かないように強く押し込んだ結果ボイスコイル部分を潰し今度は音が鳴らなくなってしまいました。笑
何れにせよ、大変勉強になっております。
このような記事を公開してくださりありがとうございます。
ついでにもう一点程お伺いさせていただきたく、
下部の支えの3Dプリンタは穴が最後まで空いていないのですがこちらは接着剤など使わず差し込み+ワッシャー+ナットのみで固定しているのでしょうか?
自分のやり方が悪いのか、少しぐらついてしまうことがあったため確認になります。
もう少しスピーカーを買い込んでトライしてみます。
ボイスコイル&センターキャップの所は接着剤を塗ったら軽くフワッと平面になるように置く感じで、あとは自然乾燥でうまく出来ると思います。センターキャップ部分がつぶれても、ボイスコイルの所が生きていれば、振動でうまく出来るとは思います。(僕も何個か失敗してつぶしたり、壊したりもしました)
一番下の円の土台ですが、ボルトの中にボンドを入れて接着させています。
ご指摘の最後まで穴を開けてない理由については、円形の土台として安定しているので、この部分は固定化させてしまおう、という所からです。
穴を貫通させて、土台の両面からナットで固定させても良いとは思いますが、その場合、全体を4点のナットか何かで支えることになって、振動=音を出すと、全体がかなり不安定になるので、円形の土台で全体を支持させるため、4本の支柱部分と土台部分は完全に接着しています。
ただ、穴を貫通させて、さらに下に土台を用意&全体を支持させるようにしても良いとは思います。
Niisato さま
ご返信遅くなりました。諸々詳細なご説明ありがとうございます!
大変綺麗に記事にまとまっていた為、自分でもそつなくできるイメージでしたが実際にやってみて至るところで創意工夫を感じ、大変勉強になりました。買うと数万円してしまうモノをこれだけ低コストで生産する方法を体系化し公開してくださり、感謝しかありません。
秋葉原でまたスピーカーを買いなおしてリトライしてみます。
本当にありがとうございます。